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就職氷河期世代はブラック企業でパワハラで苦しみ、いま他責自責の念に駆られている【沼田和也】

『牧師、閉鎖病棟に入る。』著者・小さな教会の牧師の知恵 第13回

 まっすぐな道を歩いていて、目の前でY字型に道が分岐している。さて、どちらの道を行くべきか。目的地があるのなら、それぞれの道に見えている風景を見比べたり、グーグルマップと比較したりしながら、「たぶんこちらだろう」と見当をつけて歩きだす。もしも道を間違えたなら、分岐点まで引き返せばよい。だが、「人生の分かれ道」と呼ばれるようなケースはどうであろうか。

 

 そもそも人生の場合、今ここが分かれ道であると、リアルタイムに認識できるのだろうか。仮に「ここが考えどころだぞ。よく見極めて進路を決めなければ」と自覚しているとする。だが人生において、選択肢が二本の道のように見えているとは限らない。あれかこれか、選ぶべき道を悩むにしても、悩んでいるのは「あれかこれか」についてだけなのであって、他のことは頭にない。わたしたちは後になって「しまった、『あれかこれか』だけが全部じゃなかったんだ」と気づくのである。極論すれば、人生には分かれ道などない。分かれている道があったとしても、本人にはクリアに見渡すことができない。選択肢など見えようが見えまいが、その時点ごとの精いっぱいを生きて、巻き戻しのできない人生を突き進むしかないのである。あなたもわたしも、誰も人生の外側から、人生全体のコースを見渡すことなどできないのだから。

 

 わたしたちは限られた時間を、限られた場所で、限られた人々と共に生きている。そうやって生きている自分自身を、外から俯瞰することはできない。だから自分が今なぜ、こんなことになっているのかの説明がつかない。それはとても苦しいことであるがゆえに、わたしたちはしばしば、それを誰かのせいにしようとするし、また、必要以上に自分のせいにしようともする。それは今のわたしたちに始まったことではない。冒頭に聖書を引用したように、はるか古代の人々もまた、自分ではどうすることもできない逆境に陥ったとき、それを父祖たちのせいにしようとしたり、そうかと思えば激しい自責の念にかられたりと、揺れ動いたのである。

 

 この他責と自責の揺れ動きに対する「これが答えだ、これをすれば悩みはなくなる」という便利な処方箋は、ない。ないと、わたしは思っている。ただ、あなたがもしもこうした理不尽な苦しみに悩み、誰かのせいにしたいと思い、あるいは自分を責めようとしたとき、その葛藤は間違ってはいないということを、わたしはあなたに伝えたい。それは古代からの普遍的な苦しみであることを、わたしはあなたと分かちあいたい。あなたの苦しみは、はるか古代人とつながっている。

 

文:沼田和也

 

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沼田和也

ぬまた かずや

牧師・著述家

日本基督教団 牧師。1972年、兵庫県神戸市生まれ。高校を中退、引きこもる。その後、大検を経て受験浪人中、1995年、灘区にて阪神淡路大震災に遭遇。かろうじて入った大学も中退、再び引きこもるなどの紆余曲折を経た1998年、関西学院大学神学部に入学。2004年、同大学院神学研究科博士課程前期課程修了。そして伝道者の道へ。しかし2015年の初夏、職場でトラブルを起こし、精神科病院の閉鎖病棟に入院する。現在は東京都の小さな教会で再び牧師をしている。ツイッターは@numatakazuya)

 

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  • 沼田 和也
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